認知症の利用者様は、デイサービスの介護スタッフが対応に苦慮しやすいと言われています。
「もう帰らないと」「どうしてここにいるの?」といった訴えにはどのように対応すればよいのでしょうか。

◆認知症のある方にとって、デイサービスは不安を感じやすい場所
スタッフが対応に困りがちな認知症のあるご利用者様。
でも、一番困っているのは、ご利用者様自身。そう考えることが、適切な対応の第一歩になります。
認知症があると、最近の出来事について記憶が保てないことが多くなります。
昔から住んでいるご自宅では安心できても、最近通い始めたデイサービスでは不安を感じてしまいます。
何度も来ているとしても、ご本人にとっては毎回初めての場所に連れてこられた感覚だった…ということが多々あります。

「ここがどこだかわからない」「どうして連れてこられたかわからない」「何をしたらいいのかわからない」という発言は、ご本人的には不思議なものではありません。
デイサービスに通いなれてくださるまでは、ご本人のペースに合わせた関係づくりをしていくと安心感を与えられます。
例えば、初回の通所でなかったとしてもスタッフが自己紹介する、今日の日課について毎回ご説明するといった丁寧な声掛けが効果的です。
◆帰宅願望のある方の事例と対応例
帰宅願望は、デイサービスで起こりやすい認知症のある方の代表的な行動です。
「もう帰らないと」、「家のことが心配だから」、「ご飯を作らないといけないから帰らせてほしい」…など色々な理由でお家に帰りたいと言われる方は多いです。
スタッフとしては、対応に困ってしまいますよね。
帰宅願望のある方への対応のポイントは、「帰りたい」という言動の背景にある気持ちに沿った対応をすることです。
そこで、帰宅願望のある方への対応例を用意しました。
①やることを提供する
漠然と「つまらないな」「やることが無いな」と感じていると、「とりあえず帰ろうかな」と思われる方も多いです。
そんなときには、「今、お茶を入れたところなんですよ」とか、「おしぼりを畳むのを手伝ってもらえませんか?」など、やることを提案するのが有効な時があります。
②デイサービスに来た理由をご説明する
「どうしてここにいるの?」「なんで私はこんなところに連れてこられたのかしら」など、どうしてデイに来たのかわからず不安に思われている方も「帰りたい」と話されます。
そんな方には、「息子さんが、たまには羽を伸ばしておいでとおっしゃっていましたよ」などデイサービスに来ることになった理由を分かりやすく説明して差し上げるのが有効です。
ただし、「認知症があるから来たんですよ」「ご家族が介護で疲れているから来たんですよ」といったご利用者様を傷つけるような説明は絶対にするべきではありません。
◆その場の対処と原因の探求を並行して行おう
認知症の方の行動の背景には、ご本人なりの色々な理由があります。
デイサービスを楽しんでいただくために、その場をやり過ごすための声掛けのテクニックを磨くことはもちろん大切です。
ですが、その場の対処に並行して言動の背景や原因を探っていくことも必要です。

ご利用者様の介護にあたっているご家族も、スタッフと同じようなことで困っているかもしれないからです。
認知症のある方との関わりを避けるのではなく、積極的に色々な対応を試してみましょう。
デイのスタッフだけでなく、ご家族やご本人の利益にもつながります。
認知症の利用者様に怒ったり叱ったりしないこと
一番やってはいけないことは・・
認知症の利用者様に対してきつく当たることです。
認知症という症状を理解していれば、そんなことはしないと思いますが・・
中には
「なにやってるの!」
「なんで忘れてるのよ!!」
などと利用者を叱るような声かけをするのは絶対にやめましょう。
認知症の利用者様の中には、急に不安になったり落ち着かなくなったりすることがあります。
本人が一番つらい状況にあるなかで、スタッフが余計に追い込んでしまうことになりかねません。
あくまでも本人と同じ気持ちになって接してあげることが大切です。
時には利用者様から暴言や罵声を浴びせられてしまうこともあるかもしれません。
そんなことはいちいち気にしないで大丈夫です。
急にイライラするような症状はよくあることで、その場合は一度離れて落ち着かせたり、
ほかのスタッフに対応を代わってもらうなどしてみてください。
とにかく認知症の利用者様だからといって苦手意識を持たないこと。
認知症の症状をよく理解して、落ち着いて接するようにしましょう。